私と香織さんもスタッフさんと同じTシャツを着て物販のテントに入った。
  胸には大きく姫川市と書道家が書いたような字体のTシャツだけど私は結構お気に入りだ。
  ご当地アイドルってこともあるけど祭りの場の雰囲気を感じさせる。
「今日もよろしくお願いします」
  香織さんは先に伯父さんに挨拶していた。
  私も慌てて挨拶をする。
  いくら身内でもやはりという気持ちだ。
「今日もたくさんのお客さんが来ているからな。商品の確認と計算機とお釣り、手順を確認してくれ」
「わかりました」
  私は隣を見た。
  翔菜がいた。
「今から大変だよ。私と香織さんはトークをしている間に商品を積めてお会計してね」
「了解! Tシャツは芽衣と南畝センパイに分かれてる? 」
「うん。私が赤で香織さんが黒。それとサイズはちゃんと確認してね」
「了解! 」
  更に隣で聞いていた美里とサツキは大きく頷きながらテキパキと準備を進めていた。

「ところで芽衣は何をするの? 」
  翔菜の素朴な質問してきた。
「え? 私? 」
「芽衣以外に誰がアイドルをしている? 」
「私はお話と握手とサインを書くのが物販での仕事だよ」
  翔菜は目を丸くした。
「えーと、この列に並ぶ全員? 」
「そだよ。今からは一時間でライブ後は無制限! 」
「冗談……じゃない? 」
  翔菜は言葉を失った。
「ほら翔菜、手は休めない! この一時間でこの列の全員捌くんだから」
  私も袋に詰める。
「あ! 悪い悪い」
  翔菜もサイズを仕分ける。
「そうだぞ、翔菜! 私達は芽衣だけじゃなくて南畝先輩の方もするんだからな」
  美里は香織さんの方にいた。
「うわ……。美里、大丈夫かなぁ」
  私は思わず言ってしまった。
「え? 」
「香織さんの方は3列だからね」
  翔菜と改めて見るとその違いがわかる。
「本当だね」
  サツキはこう付け足した。
「早く捌いて手伝ってあげなきゃね……」
  私もそう思います。

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